家に到着するなり私はひなたと自室へ向かった。
「すぐにお布団、敷くからね」
室内の押し入れを開きながら、ひなたが私へと声をかける。
それに頷きながら、でもお礼を言う気力もなく畳の上に寝転がった。
グラリ、と視界が揺れたような気がして唇を噛む。
…ここまで酷い痛みは、初めてかもしれない。
頭の中で突き刺すような痛みが、まるで警鐘のように鈍く…そして鋭く響き渡る。
雛について、何かを忘れている___それについてはもう、とっくに気づいていた。
私は…何か大切な事について見て見ぬフリをしている。
それはきっと、重要な記憶。
そんな記憶から逃げている自分自身を、痛みが責めてきているような気がして…強く目を瞑った。
ひなたの声がする。
「奏ちゃん、起きれそう?」
私は首を振った。
額から脂汗のような物が流れた。
「痛いよね…何もできなくて、ごめんなさい」
優しさを含んだ、暗い声。
ひなたの温かい手が、私の背中に添えられる。
目を開くと、心配そうに見つめるひなたが傍にいた。
「…っ…」
私はギュッと唇を噛み締めながら、体に力を入れて上体を起こす。
フラつく体を、ひなたが抱き締めるように支えてくれた。
大きく息を吸って…息を吐く。
また息を吸う。
そして息を吐く。
それを何度か繰り返して、ひなたに呟いた。



