二階に繋がる階段の隅にはクモが巣を作っていて、まだ長かった髪にまとわりつきそうで…私は足早に通り抜ける。
三階、四階、そして五階。
屋上のドアを開ける直前、小さく深呼吸をした。
ドアノブを回す。
そこで私を出迎えたのは…あの日、修学旅行で出会った女の子。
雛だった。
彼女は私を見つけるなり、ニコリと笑って手を振った。
その体は、少しでも後ろに傾けば転落してしまう場所に座っている。
「雛、だよね…?そこから離れて、危ないよ!」
私が叫ぶと、雛はこてんと首を傾げた。
「危ないって…私達、今から死ぬのに?」
「死なない!死んじゃダメ!」
言いながら雛に一歩ずつ近づく。
足元に転がっていた缶が爪先にあたって音を立てた。
少しずつ距離を詰める。
今、彼女はヤケになってるだけだ。
ちゃんと説得すれば、自殺なんてバカな事、きっと止めてくれる。
大した根拠もなく、そう信じていた。
「イジメが辛いのは分かる、だけどこんな事しても意味ないでしょ!?」
私の言葉に雛が表情を固くした。
鋭くなった目つきに体が強張る。
彼女はどこか悲しげな、ぎこちない笑みを浮かべて口を開いた。
「実由さ、イジメられた事ないでしょ?だから分からないんだよ。私の気持ちなんて、これっぽっちも」
「それ、は…」
「もういいや、元々一人でも死ぬ予定だったから」
返す言葉を探す私を見て、雛はため息交じりにそう言った。
その場で立ち上がり、彼女がこちらへ背を向ける。
壊れたフェンスが風に揺れてガタガタと音を立てた。
一歩進めば真っ逆さまな屋上のふち。
そこに雛が足を乗せる。
「___ダメ!」
私は雛に手を伸ばした。



