「雛がっ…夢、こっちを見て、怒ってっ…」
震えた声が言葉を必死に紡ごうとする。
辿々しいそれを聞きながら、琴李が優しく私を抱きしめ返してくれた。
背中をポンポンと一定のリズムで叩かれる。
それはまるで親が子供をあやすようだった。
「大丈夫…大丈夫だよ、実由ちゃん。私はここにいるからね」
琴李の柔らかな手が私の頭を撫でる。
少しずつ落ち着きを取り戻してきた私は、それでも琴李から離れる事ができずにいた。
触れている寝巻き越しの彼女の体温が温かくて、安心する。
これは生きている人間の温かさだ。
琴李も…そして私も生きている。
でも、雛は…あの子は。
ふと夢の中の冷え切った雛が脳裏をよぎる。
骨が折れて、変な方向に曲がった体。
溢れ出る血が頭部から広がる光景。
光のない、真っ暗な瞳。
また、僅かに体が震えた。
消えてくれない。
あの日の雛の、最後の姿。
もう、一人で抱えこむのは限界だった。
誰かに…話したくてたまらない。
雛の最後、立ち会った私の罪。
私は震える口をゆっくり開いた。
「あの日…雛が自殺するって決めた日…私、その場所まで行ったの…」
私は琴李の体を強く抱きしめたまま、雛が死んだ日の事を思い出し、語った。



