友達ドール2


「ありがとう、琴李」


お礼を言った私の頭には、まだ雛がいた。

もう、許されたい。

まだ、許されちゃいけない。

琴李が許してくれた。

雛は許してくれない。

何も償えない。

すでに償った。

まだ、償う方法がある。

頭の中がうるさくて、それを振りきるように琴李の手を引っ張った。


「他のお店も見てみようよ、観覧車も乗ろう」


わざと明るく振る舞っている事に、気づかれているだろうか。

琴李は何か言いたげな視線を向けて…すぐにニコリと笑ってくれた。


「うん、いっぱい遊ぼう」


観覧車に乗って青いネモフィラの絨毯を真上から見た。

人が空いたキッチンカーを巡って美味しい物を食べて、お土産屋さんで家族へのお土産を買った。


「これ、お揃いで買わない?」


加工されたネモフィラの花が入ったガラス玉のキーホルダーをお揃いで買った。

帰り際、手を繋いで電車に乗り、少し固い座面に座りたくさんお喋りをして…。

そして、私達は家に帰った。

玄関のドアを開けるなり由太が駆け寄ってくる。


「おかえり、ねーちゃん、琴李ちゃん」


『ただいま』


琴李と声が重なり、お互いの顔を見合って笑う。

スマホで撮ったたくさんの写真を由太と両親に見せて会話に花を咲かせた。

ママの作ってくれた温かい晩ご飯を食べて、お風呂に入り、琴李を連れて自室へ向かう。


「今日は琴李のおかげで楽しかったよ、ありがと」


「ううん、私こそ…実由ちゃんがいてくれたから楽しかったよ。ありがとう」


布団に潜りこみ、クスクスと小さく笑い合う。


「それじゃあ、おやすみなさい___」


電気を消して、目を閉じて…。

私はその日、夢を見た。


***


古びた廃墟の屋上だった。

私はそこに立ち、下を見下ろしている。

眼下には湿った土の上で動かない雛の姿。

流れ出す赤い液体。

横を向いたままだった雛の顔が動いた。

私を見る目に、光はない。

色を失った唇がいやにハッキリと動く。


___何で一緒に逝ってくれなかったの…?


***


「___っ!!」


私は声にならない叫び声と共に、飛び起きた。

額から汗が流れている。

心臓がうるさい。

隣で眠っていた琴李が起きる。


「実由ちゃん…?どうしたの、何か___」


上体を起こした彼女の体に、私は抱きついた。