視線がゆっくりとした速度で下へ移動する。
そこにあったのは、白い髪ゴムで束ねられた髪。
美しい断面でスッパリと切り落とされていた。
手で後頭部を撫でる。
襟足の部分が短い。
かろうじて首に毛先が届いているくらいだろうか。
大切にしていた髪の毛を切り落とされた事に対して、最初に感じたのは絶望の二文字。
だけどそれと同時に湧き上がる感情がもう一つだけあった。
私の口元が緩む。
「…あ…は、は…」
つい笑ってしまった。
あまりのショックでおかしくなったわけでも、精神が壊れたわけでもないと思う。
だって、遂に知れたんだから。
ずっと知りたかった“イジメ”を受けた先の“絶望”___その一端を知れたんだから。
琴李に感謝しないといけない。
変な話ではあるけれど。
私は今、心からそう思っている。
雛。
ねぇ、雛。
私も、知れたよ。
人ってこんな簡単に死にたくなれるんだね。
また伸ばせばいいだけの髪の毛。
それを身勝手に切られただけで、こんなにも。
許せない。
これでいい。
酷い。
ありがとう。
矛盾した感情が目まぐるしく脳内をかき乱す。
「…これで、私の考えた“イジメ”はおしまい。…どうだった?何か分かったかな?」
琴李がこてんと首を傾げる。
私の唇は震えながらも、静かにお礼を告げていた。
___ありがとう、琴李。
そう言い終わった私の頬を、一筋の涙が伝っていた。
これが…これこそ私が望んだ事。
琴李の協力のおかげで知れた感情を、大事に大事に心の奥にしまった。



