「実由…アンタ大丈夫なの?顔色悪いよ」
ミオがそう言って手鏡を私に向けた。
鏡に映る私の顔は青白く、目元にはうっすらとクマができている。
「今日は早く家に帰って、ゆっくり休みなよ。私が送っていってあげるから…ね?」
手鏡をカバンにしまいながらミオが優しく笑う。
私はそれに首を振った。
サラサラと髪の毛が揺れ動く。
「ごめん、まだ帰れないの。ちょっと約束があって…」
「もしかして…成宮さん?」
頷く私を見つめるミオの顔が、険しくなる。
「そんなの無視しなよ!…最近の成宮さん、実由に…その、あたりが強いっていうか…」
琴李の行動を“イジメ”として指摘しないのはミオの配慮だ。
彼女には私と琴李は今“ケンカをしている”というふうに話していた。
被害を受けている当事者…その私がイジメと認めていないから、ミオは“あたりが強い”という言葉を選んでくれたんだろう。
あくまでもコレはイジメではなく…友達同士のケンカが少しヒートアップしているだけ。
それならば他者は深く追及しにくい。
私はカバンを持って立ち上がった。
「大丈夫だよ。それじゃ私行くから…またねミオ」
「あっ…ちょっと実由っ…!」
ミオをその場に残し、足早に教室を出て外に向かう。
広いグラウンドを経由して倉庫へとやってきた。
古びたドアを開ける。
キィ…と音をたてて、ホコリが宙に舞った。
そこには___。
「待ってたよ、実由ちゃん」
そこにはすでに、琴李がいた。



