「きっしょ」
「え……?」
「普通ムカつくでしょ?! 璃子にも絵梨花にもあたしにも」
(??)
私は無意識に首を傾けていた。
「……美咲、何言ってるの?」
美咲の言っている内容が本気で私には理解できない。
「私が美咲にムカつくなんてとんでもないよ」
美咲が私を心配して言ってくれる言葉が素直に嬉しくて、友達のいない私が友達の多い美咲と一緒にカフェに行けることが楽しくて、私が怪我をしたり嫌がらせされる度に怒ってくれる美咲に嬉しくて涙が出そうになってくる。
「怒ってくれてありがとう」
「……っ、なんでずっと笑ってんのよ! ほんと気持ち悪い。人形じゃんっ」
私がにこりと微笑むのとは対照的に美咲は吐き捨てるようにそう言うと、カフェから出て行ってしまった。
(美咲……ごめんね……)
「……はぁ……」
ひとりきりになった私はため息をこぼす。
どうやら私はまた美咲を不愉快にさせてしまったようだ。
私は他人から見たら、欲しがるモノ全てを持っているらしい。そして美咲から指摘される度にそう言われるだけの自覚も芽生えてきた。
けれど私は他人が欲しがるものに興味はない。むしろ、他人がみな持ってるものに興味がある。どんなに経験してみたくてもできなくて、欲しくても買えず、決して手にできないもの。
──それは『怒りの感情』



