「全然悪くないでしょ? 璃子の付き合ってた彼氏がアンタをたまたま見かけて、一目惚れしちゃって別れただけじゃん。そーゆーの逆恨みって言うんだよっ」
語尾を強めると、美咲は人差し指で私のおでこを弾いた。
「……っ」
「あはは、おでこ赤くなってる〜。ねぇ、痛かった?」
「ううん、大丈夫だよ」
「あっそ。じゃあもうひとつ。うちの大学のミスキャンパスに選ばれた絵梨花から嫌がらせされてた件はどうなったの〜」
先月のことだ。うちの大学でミスキャンパスのコンテストがあったのだが私は実行委員からの誘いを断り出場しなかった。
そうして選ばれたのは英文科の高橋絵梨花さん。しかしSNSで本当のミスキャンパスは私が相応しいという匿名の投稿が出て以降、新聞社や芸能関係者が大学に私を見に来るようになった。
「花音が出てたらこんなことならなかったのにさ。せっかくミスキャンパスに選ばれた絵梨花の面子丸潰れだったよね」
私は返す言葉に詰まり目を泳がせながら、アイス抹茶ラテをかき混ぜた。
「ねぇ、花音知ってる? ロッカーにゴキブリの死骸入れられたり、SNSで男遊びばっかしてるとか花音の加工したベッド写真ばら撒かれたり。あれ全部、絵梨花らしいよ」
「そうなんだ……。えっと、でも私も……男の人とそういうことしたことあるの事実だし、ゴキブリも……捨てたらいいだけだから」
思ったままを口にしたが、美咲が舌打ちをすると怒りで顔を歪めた。
「ちょっと! いいかげんにしたらっ?!」
美咲の怒声に私の身体はビクッと跳ねる。



