キミの感情

「ぼーっとしてないで食べれば?」

「あ、うんっ」

私はまた美咲の機嫌を損ねないように、すぐにマフィンをひとくち齧った。


「美人は得よねー。マフィン齧ってても絵になるわ」

「そんなこと、ないよ……」

途端にマフィンを食べるスピードが遅くなる。これ以上楽しみにしていた美咲とのカフェタイムを私の不用意な言動で台無しにしたくない。


「ほんと花音って顔も性格も美人すぎで面白くなーい」

「…………」

冗談なのか本気なのかわからない口調で美咲がチーズケーキの最後の一欠片を食べ終わるのを見て、私は半分残ったマフィンを無理やり口に押し込んだ。
もたもたしていたら美咲の機嫌を損ねてしまう。

「ね、自分でもそう思ってるでしょ? 私って人より何でも持ってる〜って」

私は美咲に手で少し待ってと合図をしてから、急いで抹茶ラテで口内のマフィンを胃に流し込む。

「けほ……ごめん。えっとさっきの質問だけど。自分では……そう思わないから……私なんて欠陥品だよ」

心からの本音だった。
私は欠陥品。
皆んなとは違う。
皆んなと同じじゃないから。

私にとって初めてできた友達と呼べる存在である美咲には、いつか打ち明けたいと思っていたが私が欠陥品と口にした途端、彼女の顔が歪む。

「欠陥品? 花音が?」

「うん……私ね……」

「はぁああ。ありえないんだけど」

私の言葉を遮ると美咲は軽蔑の眼差しを向ける。それだけでは収まらないのか、彼女は苛立ったようにネイルの施された爪でテーブルをカツカツと叩き始めた。

(あ……どうしよう)