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「花音、お待たせ〜」
明るめの栗色の髪をさらりも靡かせた矢野美咲がカフェのテーブルに座っている私の目の前に立った。
「ううん、さっき来たとこだよ」
「良かった〜、じゃあ注文いこ」
「うん」
私はテーブルに花柄のハンカチを置き、場所取りをすると美咲と一緒に注文カウンターに並ぶ。
「どれにしよっかなぁ〜ケーキの種類多すぎ」
「これだけあると悩むね。たしかチーズケーキが一番人気だったよ」
「ふぅん。じゃあアイスラテのトールとチーズケーキにしよっと。インスタあげるから真似しないでよね」
美咲が私の肩を人差し指で突く。
「えっと……じゃあ他のにするね」
実はチーズケーキを頼もうと思っていた私は注文の順番が間も無くやってくるため少し焦ってくる。
「ねぇ、あの店員カッコよくない?」
「うん、そうだね」
私は美咲の話に相槌を打ちながらもショーケースと睨めっこだ。
「ちょっと〜聞いてんの?」
「あ、ごめんね。ケーキ迷ってて」
「はぁあ。ほんと花音は自己中ー」
「……ごめん。えっと、お詫びにここの支払い私がしようか?」
私は美咲の機嫌を損ねてしまったことに罪悪感を感じてそう提案したが、逆効果だったようだ。美咲は眉を顰めると私にぐっと顔を寄せた。



