次の日。
ピンポーン、ピンポーン、と何度も鳴るドアベルに起こされた。昨日は疲れてすぐに寝て、今日は講義はあるけれど午後だからとゆっくりするつもりだったのに……一体誰だ……
「はぁ……」
ピンポーン、ピンポーン……
う、煩い……ドアベルは連打するものじゃない……
内心文句を言いつつ、上着を着て玄関に。ドア窓を覗くと……えっ。
なんで、この人がいるの……? いや、まだ寝てる……? だって、なんで落とし物を拾ってくれた彼が……いや、違う。あの優しいお兄さんがドアベル連打して眉間にしわ寄せてるわけがない。昨日のお見合い相手だ。
でも、こんな時間にどうしてこの人が……?
いや、ちょっと待って、こんなにドアベル鳴らされたら近所迷惑だ。
内心ため息を吐きつつ、ゆっくりとドアを開けた。
「よ、おはよう。良い朝だな」
「……おはようございます」
……笑顔だけど、目が笑ってない。すぐに開けなかった事、怒ってる……?
でも、何でこんな人がここに……というか、何で私の家知ってるの……?
「寝起きだな」
「……ご用件は?」
「あぁ、これ」
懐から出したのは……小さな、青い箱。何、これ。いかにも高級そうな箱だけど。
「お前、恋人はいないな?」
「……いない、ですけど」
「ならいい。開けてみろ」
恋人……? なんで、そんな事聞くのよ。
これ、本当に開けていいの……? 怖いんだけど……
これ、このまま返す? と、思ったけれど……彼の顔に、さっさと開けろと書いてあるのは見間違い?
震えそうな手で、ゆっくりと、少しだけふたを開けると……閉めた。
「……私、まだ寝てます?」
「寝ていないから安心しろ」
「いや出来ません」
彼に返そうとしたけれど……あの、受け取ってもらえませんか。これ、私触っちゃいけないものですよね。指紋付けちゃいけないやつ。私、白い手袋持ってませんけど。
「……あの、昨日のお食事代はちゃんとお支払いいたしますので……」
「いや、それはいらないって言っただろ」
え、じゃあ何で……こんなに金ぴかりの『指輪』が入ってるのよ。



