「フォアグラは知ってるか?」
「えぇと……アヒルを太らせるんですよね?」
「そ。アヒルやガチョウに特別な餌をたくさん食わせて太らせる。その肝臓がフォアグラだ」
それは……可哀そうな話でもある。でも、それを言えば色々なお肉だってそうだ。皆食べられてしまう運命にあるし、美味しいお肉にするために工夫したりするし。
「ならトリュフは? 白と黒の違い、分かるか?」
「……分かりません」
そもそも、白と黒があることすら知らなかった。けれど、悟ったらしい。ニヤニヤとそんな視線を向けてきた。
……私って、そんなに分かりやすかったっけ。
「トリュフはキノコの一つだ」
「へぇ……」
「土の中に埋まってるから、犬や豚に匂いを嗅がせて掘り出すんだ。産地も限られてるし人工栽培は安定していないから希少性もある。高価な理由はそれだ」
まさか、キノコだったとは……知らなかった。
しかも、白トリュフは黒トリュフより断然高価らしい。そんなものに私はこれからお目にかかれるのか……
そして、運ばれてきたテリーヌと呼ばれるもの。四角く少し厚みのあるもので……薄めの茶色。これが、フォアグラ……!
「どうだ?」
食べてみたけれど……想像していた味と、全然違う……これ、肝臓なんだよね? 肝臓っていうと抵抗はあったけれど……美味しいかも。
「お肉、ですよね……?」
「さっき説明されただろ」
そ、そうだけど……クリーミーというか、何というか……どうやって作ってるんだろう? ちょっと気になる。
そして、今度はトリュフが来た。リゾットらしいけれど……おぉ、見た事あるやつだ。この薄くなっているのがトリュフね……! 確かに色が白と黒……!
黒いトリュフだけを食べてみると……ん? にんにく?
「どうだ?」
そう聞かれると……答えづらい。せっかく頼んでくださったのに……しかも、高級だし……
「……美味しいです」
「へぇ。そんなに味がないと思うんだが?」
「……」
「トリュフはただの香り付けに使われるからな」
そ、そうなんだ……せっかくの高級なトリュフなのに、香りづけだけ、とは……
でも、香りづけでも料理に使えるくらい、ここのレストランは高級って事よね……凄いところに、来ちゃった……
今回はコース料理だったらしく、この後に出てきたスープや魚料理、お肉料理ととても高級感あふれる美味しい料理が運ばれてきた。最後にはコーヒーまで出てくるとは思わず、驚いてばかりだった。
けれど、さすがにお腹いっぱいだ。お昼ご飯はちゃんと食べなかったけれど、それでもお腹いっぱい。追加で料理を頼んでしまったから。



