「凜華から、君の話をいくつか聞いているんだ。和真が全然喋らないから。でも、ずいぶん前から和真が君とお付き合いしていたなんて知らなかったよ」
「……あ、はは……」
そういえば、七瀬さんにそう言ったな。一応和真さんと口裏を合わせたけれども。
けれど、本当の事を思うと、心が抉られる……
「アイツは本当に何も言わないからな。でも、久しぶりに会った和真は前より柔らかくなったかな。瑠香ちゃんのおかげだね。ありがとう」
「あ、いえ、そんな……」
「でも、瑠香ちゃんに気を遣っていたでしょ。もしかして瑠香ちゃん、高いところが苦手?」
「……」
な、何故それを……だって、一緒にいたのはたったの数時間よね……?
「ほら、やっぱり。和真がずっと手握って奥に行かせなかったから、そうなんじゃないかって思ったんだ。珍しい事でもするもんだね」
「そ、そうですか……?」
「うん。しかも一軒家なんて買っちゃうんだから。高所恐怖症の瑠香ちゃんの為かな?」
「……」
小夜子さんが、ご高齢になったからだと、思います。
でも、ちょっと待って。さっきの話を聞くに、泉谷さんと同じマンションにいたから一軒家の方に引っ越した、というのもあるかもしれない。だいぶ前から計画していた、って言ってたもん。
「……和真はね、実家暮らしの時は家で食事をするのが嫌いだったんだよ」
「えっ」
「両親がいれば会社の話ばかりが食卓に出される。勉強はちゃんとしているのか、成績はどうなんだ、お前も将来は自分の会社を継いでもらう、そんな話ばかりだったからね。だから、食事の時間には顔を出さず、外で食べてくる事が普通だった。なら、今の和真はどうかな?」
「……」
「奥さんの君が見る和真は、どうかな?」
実家で食事をするのが嫌い、だったんだ……
「食事は、外食が多いです。でも……いつも私に、聞いてくれるんです。次は何が食べたい? って。楽しく食事がしたいって、いつも言ってます」
「へぇ、意外だね。でも、それを聞けて安心したよ。いきなり結婚したって聞いたから心配していたんだけれど、これなら大丈夫だね」
私に結婚を持ち掛けた時、楽しい食事をしたいって言っていた。そうか、そういう事だったんだ。確かに、楽しくなかったとは言っていたけれど。
私と食事をするのが楽しかったから。
ただそんな理由でこんな結婚を提案されて、頭がおかしいんじゃないかって思っていたけれど……彼にとっては、そうじゃなかったんだ。実家暮らしの時、というのは……たぶん、小さい頃からという事なんだと思う。
そんな事を聞かされながらの食事……プレッシャーをかけられながらの食事なんて楽しくなかったと思う。しかも、双子なんだからきっと……比べられた。
私だってそうだ。ずっと、一花を見習いなさいと言われ続けた。それは、十分にプレッシャーになっていた。
けれど、彼らが受けたその言葉はもっと重みがあったと思う。
そっか……そういう事だったんだ……
「話は終わったか」
その時だった。そんな声が、聞こえてきた。振り向くと、この話題の中心人物だった和真さんの姿があった。



