メシ友婚のはずなのに、溺愛されてるのですが!?


「久しぶり。食べに来たのか」

「冬真も?」

「そう、麗子と」


 そして、彼がいて見えなかった。その向こう側から出てきた人は……ついこの前、和真さんがいた高層マンションに一人で行った時、声をかけられた女性だ。


「瑠香、前に言ったろ。こいつが双子の兄、冬真」

「へ、へぇ……あっ、こ、こんにちは、月城、瑠香です……」


 ここは初めましてと言うべきなのか迷ったけれど、嘘はいけないし……月城という苗字にまだ慣れていないから、だいぶぎこちない挨拶になってしまった。

 けれど……隣の女性から、鋭い視線を感じる。そんなに、駄目だっただろうか……? あ、まぁ、私お金持ちじゃないからちゃんとしたマナーとか知らないし……


「うん、こんにちは。僕は月城冬真。こちらは僕の婚約者、泉谷麗子さん」

「お久しぶりですね」

「ん? 会った事があるのか?」

「えぇ、顔を合わせただけですけれどね。……またお会い出来て、嬉しいわ」


 口調は普通だけれど……視線が、痛い。

 まさか、あの時のお兄さんが、和真さんのお兄さんだったなんて。まぁ、何となく、そんな気はしていた。そっくりだし、考え方も似ているし、それに双子の兄がいるって言っていたし。まさか、とも思っていたけれど……納得出来た気がする。

 でも、いきなりはやめてほしい。驚きすぎて顔がぎこちない笑顔になっているかもしれない。


「和真達はこれから食事かしら? 私達もなの。もしよかったら、一緒に食事しない? 冬真さんもどうですか?」

「そうだね。一度会ってみたいと思っていたし。どうかな?」


 ちらり、と和真さんの方を見ると……同じく、私を見ていた和真さんに驚いてしまった。


「ここはね、黒毛和牛が美味しいのよ。ぜひ、瑠香さんにも食べてほしいわ。ここの景色も良くてお気に入りでね、予約して取っておいてもらっているの。さ、行きましょう」


 数秒黙っていた私達に、婚約者らしい泉谷さんがそう言って和真さんの手を取った。対する和真さんはやんわりと手を払っていた。呆れ顔を浮かべているけれど、一体どういう事なんだろう。


「……せっかくの二人だけのデートだったんだけど、冬真達がいるなら仕方ないな」

「悪いね」

「悪いと思ってるなら誘うな」

「も~意地悪言わないでよっ」


 三人はだいぶ仲が良いように見えるけれど……どうなんだろう? 私、邪魔になっていないかな。

 和真さんのお兄さんと、お兄さんの婚約者。そんな二人と一緒に食事だなんて、緊張でちゃんと食べられるか不安でしかない。けれど、その中に違う緊張感もある。

 お兄さんは、私の事を覚えているだろうか。まぁ、一ヶ月も経っていないのだから覚えている、かもしれない。あの時の私は、今とは違って古着の平凡な姿だった。それなのに、今はこんなに綺麗な服を着て、素敵な結婚指輪をして、和真さんの妻になっている。

 どう、思うだろうか。

 案内されたのは、個室。丸テーブルが用意されていて、壁には大きなガラスがあり綺麗な景色を映してくれている。うん、綺麗なんだけど……昼間だから、下が良く見えて……怖いな。高所恐怖症には、これはちょっときつい。

 けれど、全く手を離さなかった和真さんが、窓から一番離れた場所に座らせてくれた。私が高所恐怖症だという事を知っているから、気を遣ってくれた……というより、私がちゃんと出来るか心配という事かな。いきなりだったし……