その後に連れてきてくれたお店は、高級和食店。老舗らしい。
そんなところに来てしまっていいのだろうかと思ったけれど……
「鴨、ローストステーキ……!」
鴨自体が初めてなのに……ステーキにしゃぶしゃぶと鴨肉の大渋滞!
「鴨肉、オンパレードですね……」
「ぷっ、好きなだけ食っていいぞ」
「……ありがとうございます」
はぁ……幸せすぎる。鴨肉ってこんな味してるんだ……
けれど、ここに来る前に和真さんがお酒飲むかと言い出した時は本当に焦ったな。全力で止めたけど、諦めてくれて良かった。
……さすがに、またキス魔になってほしくない。まぁ、ちょっとだけ飲むのであれば、たぶん、大丈夫だと、思うけど……でも駄目。
けれど、さ……和真さん、その時のことは全く触れてこない。覚えてない、のかな? 酔ったら記憶飛ぶ人?
……人のファーストキス奪ったくせに。
「ん? どうした瑠香」
「……何でもありません」
口が裂けても言えないけれど。
「鴨肉ってなると獣臭さが残るけど、ここの鴨肉はいいな。気に入った。瑠香はどうだ?」
「あ、はい、美味しいです」
「それは良かった。じゃあ、また来るか」
「……はい」
いつまた来れるかは、分からないけれど。でも、確かにまた来たいかも。もちろん、和真さんと一緒に。



