ようやく、私達のとった部屋に辿り着いた。酔っ払いの和真さんは一応ちゃんと歩けたけれど、それでも油断ならないため、和真さんの経営する会社の秘書だったらしい飯沼さんに付いてきてもらった。そこら辺で寝っ転がってしまっては私はどうすることも出来ないから。
「では、ここで失礼いたします」
「おう」
まさか、和真さんの秘書さんとお会い出来るとは思わなかった。あ、まぁ、社長ではあるから秘書は当然いるだろうけれども。
見たところ、すごく真面目そうな方だった。和真さんと同い年くらいだったかな。
でも、どうしてあのタイミングだったんだろう。別に会いに行かずとも、スマホのやり取りで出来た内容だと思う。しかも、叔母さん達の前で喋っちゃうし。和真さんは叔母さん達の前では会社員、って事にしていたのに、これで社長だって事が分かっちゃったし。
まぁでも、あんな会社を潰してしまった事実に驚いてはいたけれど。
「瑠香~……」
「はいはい、何ですか」
体重をかけて後ろから抱き着いてくるこの社長さんは、どうしたらいいのかしら。とりあえず、お風呂はNGね。水でも飲ませとくか。
ここはベッドのある和室らしく、座椅子に座るよう促した。確か、部屋で飲もうとペットボトルの飲み物を買ってきたんだっけ。
「はいどうぞ。桃味の水ですけど」
「はぁ……ありがと」
それを受け取った和真さんは……わぁ、一気飲みだ。
申し訳なさが募り、私は静かに和真さんの座る座椅子の、右隣の座椅子に彼を前にするように正座した。
「……勝手に頼みやがって……」
「あの、本当にすみませんでした……」
「瑠香は謝るな」
「はい……」
イラついてるのか、超絶不機嫌なのか、だいぶ目が据わっている。まぁ、何となくだけれど私がいなかった時間はだいぶ大変だったようだし。
でも、私にも責任はある。二人は書類上は私の母親と妹なんだから。



