思った通り、ホテルのチェックインまで温泉街を4人で回る事になってしまった。新婚なのにお邪魔してごめんなさいねと言ってるくせに入り込んでくるんだから呆れる。そして一花に関しては……私達の間に立ってくる。よほど和真さんを気に入ったらしい。
……人のものを欲しがる性格は、まだ直ってなかったのね。
まぁ、がっつり手を繋いできた和真さんのおかげで何ともなかったけれども。
そして、車があるからとようやく離れられたけれど……
「……あの、すみませんでした」
「……」
「あの、和真さん……」
「……」
……目が、据わってる。さっきだって、車取ってくると伝えると一花が付いていきそうになっていた時にもヒヤッとした。いきなりのお泊まりだから買い物もしたいと言って何とかホテル集合に持ち込んだけれども……もしかして、この人我慢の限界超えてる?
「呆れを通り越して賞賛を贈りたいな」
「……」
「お前に」
……私に? どうして? 呆れられる要素、あったかな?
あ、まぁ、それはさておき、とりあえず……待ってるから早く行かなきゃ。
明日は大学の講義があるけれど、昼前からだっけ。午前中はバイトもないし。それまでに帰らなきゃいけないけれど、二人が帰してくれるだろうか。しつこいあの二人が。
思った通り、ホテルに集合した二人は全く離れる事はなかった。……和真さんに。
「瑠香はそれ部屋に持っていきなさい。ほら和真君、こっちいらっしゃい」
「瑠香、俺が持っ……」
「和真さん和真さん! ここのホテル私達のお気に入りでね――」
へぇ、お気に入り……ここ、何度も来たことがある、って事よね。
しかも、一花はがっしりと和真さんの手を握ってるし、にやりと私に視線を向けてくるし。
「……」
けれど、和真さんには悪いけれど、二人と離れられてホッとしてしまった。ようやく息が吸えた気分だ。
早く置いてきてから戻るべきなんだろうけれど……私にはどこに行くかすら教えてもらえなかったから、三人を見つけるのは難しいしな……完全に蚊帳の外。
……学生時代の時のように。
「……はぁ」
ふと、スマホを見てみると……うわ、七瀬さんからのメッセージばっかりだ。心配する言葉ばっかりね……
どう返したらいいかな、と思っていたら……和真さんからのメッセージが一つ。飯に来い、とホテル内のお店の名前が送られて来た。名前からして、和食料理店、かな。



