「瑠香、さっさとバイト辞めろ」
「……いきなり、ですね」
「お前が忙しすぎるんだろ」
「……」
……何で私が和真さんに怒られないといけないの。
彼に助けてもらってから、大学では指輪と服を強制させられてしまった。でもこっちは買ってもらった側だから素直にその通りにせざるを得ない。また彼女達が接触して来たら、と思ったけれど……視界に入ってきても血相を変えて逃げるようになった。
だから、今までよりも楽に大学生活が送れているのだけれど……
でも、さすがにバイトまで指図されるのはない。
何故バイトをやめろと言い出したのかという理由は分かってる。私の予定が全然空いていないからだ。そのせいで約束していた鴨肉を食べに行く約束がだいぶお預けとなってしまう。
「どっちかでもいい。さっさと辞めろ」
た、確かに二つバイトを掛け持ちしてはいるけれども。昼前から夕方まではカフェのバイト、そして夜はコンビニのバイト。けれど、二つ掛け持ちしなければ借金返済に叔母への仕送りに生活費にと稼げなかった。
まぁ、今はその二つはなくなったから余裕は出来たけれど……結婚したとなればかかるものもあるから貯金は欲しい。
「あの、私バイト辞めたら家賃とか払えませんので……」
「俺が払ってやる」
「じゃなくて!! 何でもかんでも払ってもらうのはこっちが困るんですっ!」
「は?」
色々と高級料理を奢ってもらって、それからこの結婚指輪に洋服達まで。さすがにもうこれ以上買ってもらうのはなしだ。それに家賃だって、私が別居がいいという我儘を言ったから発生しているわけだし。だから家賃は絶対に私が支払いたい。
だって、払ってもらってしまったら貧乏な私がお金持ちにおんぶに抱っこでたかってるようになっちゃうもん。
「……お金があれば何でも解決出来ると思ったら大間違いですからね」
「だが大半は解決出来る」
このお金持ち……まぁ確かにそうかもしれないけれど、そうじゃない。
「絶対にやめませんから」
「おい」
今日は、時間がないと言ったのに大学終わりに捕まえられ車に押し込められ捕獲された。でもこのあとバイトが入っているから、送ってもらう事になってしまった。だから、意地になってしまい到着していたアルバイト先に逃げるように車を降りてしまった。
おいっ! と声がしたけれど……無視をした。色々と買ってもらって、ここまで送ってもくれたのにこの態度は失礼だとは思うけれど……それでも、貧乏がお金持ちにたかっているように思いたくなかった。周りにも、思われたくなかった。
七瀬さんと一緒にいる時だってそう。だから、ちゃんとアルバイトをしてお金を稼ぎたい。そう思ってしまった。
けれど……



