メシ友婚のはずなのに、溺愛されてるのですが!?


 開けたのは……ここに私を閉じ込めた、豊峰さん。けれど、先ほどよりも怖い顔をしている。そして、腕を掴んではへやから引っ張り出された。

 そして思いっきり頬を叩いてきた豊峰さんは……だいぶご立腹のようだった。


「アンタ、不倫させてたの?」

「えっ」

「あの人、指輪してたけど。結婚してる男に手を出すなんて、アンタ本当に最低ね」


 ……そういえば和真さん指輪してたな。確かに、怒るのも頷ける。

 けれど……


「あぁ、親のいない孤児はこういう知恵を身に付けなきゃ生きていけないものね」


 途端、顔がこわばった。


「流石親なしだわ」


 この言葉は、彼女達から、学生時代にずっと、ずっと聞かされてきた。

 色々と噂を振りまかれて、学校になんて行きたくないとまで思ってしまった。けれど、親のいない私は母の妹である叔母に引き取ってもらっているから、文句や迷惑はかけられなかった。

 あぁ、もう……いっその事、心思いに、殴り飛ばしたい。

 面倒くさい、もう嫌だ。そんな感情を全部乗せて、思いっきり。


「いたいた、こんなところで何してるんだ?」


 その時だった。

 その声は、聞き覚えのあるもので。遠くから、聞こえてきた。

 この後一緒に鴨肉を食べに行くはずだった……和真さんだ。


「えっ……さ、さっき帰って……」


 そんな豊峰さんの動揺に目もくれず、彼は私の隣に立った。


「誰だ? 腫れるまで叩いたのは」

「えっ、な、何で……」

「何で? あぁ……」


 和真さんは、私の首裏に手を伸ばしては、チェーンを引っ張った。そして、前の方から出てきたものをつまみ、3人に見せる。


「で、俺の嫁にどんな用だ?」

「えっ……」

「は……?」


 3人は、だいぶ動揺しているように見える。私としても、何で部外者のこの人が大学に入れているのかが疑問で……というより、勝手に入っちゃって大丈夫だろうかという危機感がある。

 けれど、そんな私の心配を全く分かっていない彼は、チェーンを外して指輪を取り、そして私の左手を取っては収める場所に通していた。


「ったく、だから指輪してろって言ったんだよ」

「……」


 まぁ、でもしていたとしてもこうなると思うけれどなぁ……