思った通り、大学に行けば三人に捕まった。けれど、今回の〝お願い〟は全然違かった。
「ねぇねぇ、私今困ってるんだ。パパからさ、お見合い話持ち出されちゃってさ。今私恋人いるから行きたくないんだよね。しかもその日デート入っててさぁ。だから、あんた代わりに行ってきてよ」
「えっ」
私が、代わりにお見合いに行くの……?
そのお見合いに全く関係のない、私が?
「ただ行って、断ってくれるだけでいいのよ。私と瑠香の仲でしょ、お願〜い」
「どーせあんたには一生ない経験なんだし、いいと思うよ?」
「だって有名なレストランなんでしょ? いーなー」
社長令嬢に来るお見合い話なんて、きっと相手はすごい人なんだと思う。
そんな人の前で、断ってくるなんて、私に出来るだろうか。
「おい、なんか言えよ」
「うっ」
ガシッと、顎を掴まれた。背の低い私の顎を、背の高い豊峰さんに引っ張られれば苦しいに決まってる。
「おい」
パチンっ、そう渇いた音と共に、右頬に痛みが走った。
「は、い……」
「あは、よく言えました〜」
「分かればいいのよ、分かれば」
投げ飛ばされるように掴んでいた顎から手を離した豊峰さん。後ろの壁に、背中をぶつけてしまい、地面に尻餅をついてしまった。
じゃ、日程とかはあとで送るからよろしくね。そう一言残し行ってしまった。
「はぁ……」
せっかく、あのお兄さんにまた会えて、飲み物を奢ってくれてとても嬉しかったのに……最悪だ。
はぁ……どうしよう。



