「ねぇ~お願~い! これ代わりにやってよ~!」
「瑠香ならやってくれるよね? だって〝友達〟だもん」
私の事を友達と呼ぶ彼女達3人は、私と同じ大学に在学中の同期。彼女達は、課題とかが出ると、私を頼ってくる。
「やってくれるよね?」
「……うん、任せて」
また、受け取ってしまった。いつもそうだ。いつも、私は断る事が出来ない。彼女達の事は、高校の時からずっと一緒。だから、私は彼女の事をよく知っている。そして、彼女達も私の事をよく知っている。
彼女達の中に一人、社長令嬢のお金持ちがいる事。そして私が、実の親のいない孤児だという事を。
「あ、そういえば瑠香、バイトのお給料出たでしょ? パパからもらったお小遣い全部使っちゃってお金ないの。だから貸して~!」
「お願い瑠香~」
「……瑠香なら、貸してくれるよね?」
「っ……」
「ね? 私達、友達だもんね?」
友達。
私達の間にあるその〝友達〟という言葉は、違う意味を持っている。
とても、使い勝手のいい言葉よね。
「え~これだけ? 少なくない? もっとあるでしょ」
「もう、ない……」
「はぁ、しょうがないな~これで許してあげる」
「咲やっさし~」
彼女はかの有名な会社の社長令嬢。こんな少ないお金なんて目もくれないはずなのに。けれど、私が孤児だからというだけの理由で、高校からずっと、このまま。全然変わってない。
変わらなきゃ。もう成人したのだから、大人になったのだから、いつまでもこうしていられないのだから。
けれど、親がいないという事実が、私の足を引っ張ってくる。
何とかしなくちゃ。そう焦りを見せている時だった。



