涙を包むラベンダー(リメイク)

どれくらい時間が経っただろう。

私の頭の中で彼が手を振った瞬間、ハッと我に返った。

逢月姫
「いけない…今年は観光バスで来てるの忘れてた。」

時計を見ると、集合時間までは余裕があった。

そろそろふもとに戻って、お土産でも見ようかな。

逢月姫
「じゃあね。私、もう行くよ。ありがと…素晴らしい景色を教えてくれて…。」



愚かに手放した幸せはもう戻らない。

それでも私は、彼と出逢わなければ、人生でここへ来る選択をしなかった。

失恋の痛みも過ちも、後悔の涙も、穏やかな幸せも知ることはなかった。



逢月姫
「…日焼け止め…塗り忘れたかな…。」

私がつけていたペンダントを外すと、首元に細い跡が白く浮かび上がった。

まばゆい太陽光を浴びて、翠玉の反射光が2つに割れた。



せっかく彼が手を振ってくれたから、私も区切りをつけよう。

このペンダントをつけるのは今日で最後にする。

今度こそ私は、松葉杖と彼の支えがなくても、

1人で歩いていけるから。



―――――END―――――