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数分前、2組の教室。
ここでも話題の中心は、体育祭の種目決めだった。
教室の真ん中で、俊平とその友達たちがたむろって盛り上がっている。
部屋の片隅では、久哉がまるで他人事のように静かに座っていた。
「俊平、お前幼馴染とアレ出ろよ。二人三脚。」
騒がしい中でもよく通る大声に、久哉の目がぴく、と動く。
俊平はあからさまに苦い顔をした。
「はぁ?なんでだよ!
……あー。でも、珠桜と出たら勝ち確なんだよな、アレ。」
恥ずかしげもなくさらりとそう言った俊平に、友達の冷やかし声が沸く。
「何そのすでに経験済みみたいな発言!」
「え、だって中学ん時毎年出てたし。」
「仲良し〜!もう早く結婚しろよ、お前ら。」
男子達の声がどんどん大きくなる中、教室の一点だけが冷えていく。
それに、誰も気付かない。
「そーいうんじゃないっての!
でも、ま。ちょっと珠桜に聞いてみるかぁ。」
そう言って、俊平がスマホを取り出した時だった。
ガタン、と教室の隅で久哉が乱暴に立ち上がった音で、クラス中が静まり返る。
別段大きい音ではなかった。
けれど、“高峰久哉”が立てた不穏な音だからみんなが神経を張り巡らせた。
「…………。」
当の本人は、誰も見ない。何も言わない。
ほんの一瞬、ぽかんとする俊平に視線を送っただけ。
翳る顔と冷えた目で静かに教室を出ていった。
「機嫌悪……。誰かなんかした?」
「怖ぇえー……」
ぽつりぽつりと気まずくなった場をクラスメイト達がゆっくりとり戻そうとする中、俊平は久哉の出ていったドアを不思議そうに見つめていた。



