ハニートラップ


――鮮烈なブロンド髪。綺麗な顔立ち。


その隙間から覗く目が妖しくギラリと光って、真っ直ぐ私を捕まえる。


足が竦んで、胸が高く鳴り始めた。



「何か用、でしょうか……?」

怖いからこそ目を逸らせない。
引き締めた口元にピクピクと力が入った。


微笑みを湛える薄い唇が開いていく。
ふっと息を吸う音が聞こえた気がした直後、色のある声が空気を震わせた。



「ちょっと誘拐されてくれない?」

「――え?」


頭が状況を理解する前に、ぶわっと視界が持ち上がって足が宙に浮く。

お腹に自重でかかる圧と、腰と太ももにしっかり回る男の腕。


知らない男に私は抱え上げられていた。


「――じゃ、行こっか。」


待ったなし、拒否権もなし。
平凡な日常から、私は今日、攫われた。