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昼休み。
もう連絡も来ないのに、私は高峰くんの隣にいる。
教室に段ボールが積み上がる光景も、昼休みの密会も、
非日常だったはずなのに、“いつも通りだ”とか思ってしまった。
「今日、寝不足になってない?」
高峰くんが身を屈めて私の顔を覗き込む。
――綺麗な顔。温度の低い目。
なのに、心の中ではあの可愛い笑顔が浮かぶ。
「……ん、大丈夫。」
ほわ、と気が緩んで、気恥ずかしさに目を逸らした。
――私の反応を捉えた高峰くんの眼が、弱った獲物に狙いを定めたとばかりに鈍く光る。
私が気づく前にたちまち優しい笑顔に変えて、ゆっくりと一歩近づいた。
「でもクマできてるよ?」
高峰くんの手の甲が私の目の下をそっと撫でる。
優し過ぎるほど丁寧に触れる、冷たい感触にドキッとした。
子猫でも撫でるかの様に、その手が私の輪郭をなぞって顎先に降りていく。
熱を上げてぐらぐらと揺れる私の目を、高峰くんはじっと見ている。
「……いつもだよ。」
「そうだっけ?」
甘ったるい沈黙が落ちる。
今日の高峰くんは、ちょっと変。



