ハニートラップ


***
昼休み。
もう連絡も来ないのに、私は高峰くんの隣にいる。

教室に段ボールが積み上がる光景も、昼休みの密会も、
非日常だったはずなのに、“いつも通りだ”とか思ってしまった。

「今日、寝不足になってない?」

高峰くんが身を屈めて私の顔を覗き込む。

――綺麗な顔。温度の低い目。
なのに、心の中ではあの可愛い笑顔が浮かぶ。

「……ん、大丈夫。」

ほわ、と気が緩んで、気恥ずかしさに目を逸らした。


――私の反応を捉えた高峰くんの眼が、弱った獲物に狙いを定めたとばかりに鈍く光る。

私が気づく前にたちまち優しい笑顔に変えて、ゆっくりと一歩近づいた。


「でもクマできてるよ?」

高峰くんの手の甲が私の目の下をそっと撫でる。
優し過ぎるほど丁寧に触れる、冷たい感触にドキッとした。

子猫でも撫でるかの様に、その手が私の輪郭をなぞって顎先に降りていく。

熱を上げてぐらぐらと揺れる私の目を、高峰くんはじっと見ている。


「……いつもだよ。」

「そうだっけ?」

甘ったるい沈黙が落ちる。
今日の高峰くんは、ちょっと変。