ハニートラップ


――side.久哉


下り始めたゴンドラの中で、俺と珠桜の影が重なる。

「――俺のこと、意識してるから?」

言った瞬間、珠桜がわかりやすく動揺する。
揺れるその目に光が入るのは、肯定の証。

確かな手応えを感じたのに――
否定された。

何度も奪ってきた小さい唇が、迷うように結んだり解けたりしている。

――触れたい。
その目に俺以外映らないようにしたい。

俊平に向く、珠桜の横顔が脳裏にチラつく。
何度も見せつけられた、絶対に覆らない時の積み重ねに嫉妬した。

窓についた手に、グッと力を込めて堪える。

今は我慢。
珠桜がずっと、俺だけを意識するように。


恋だの愛だの、移り気な心なんかいらない。


体を離すと、もどかしそうな珠桜の表情に片微笑む。
手に入るまで、後少し。



欲しいのは、

絶対的な執着と依存だけ。