ハニートラップ


また静かになってしまって、2人して窓の外を見る。

ふと、私の横顔を盗み見る高峰くんが口を開いた。



「――ねぇ、俺にも俊平にするみたいに接してよ。」

「え?」


意図がわからなくて、怪訝に眉を顰める。
高峰くんの目は真剣だった。


「名前で呼んで、ふざけて、笑って、」


笑う口元が歪んでいる。
背筋がひやりとするのに、目が離せない。


「そうやって、俺の側にいてみてよ。」


見開いた目が瞬きを忘れる。


触れそうで触れない膝の距離が気まずくて、そこに置いた手に力が入った。


「む、……無理だよ。
だって俊平は幼馴染で、高峰くんは――」

言いかけて、言葉に詰まる。


――高峰くんは、“何”だろう?


窓の外の景色は煌びやかで広いのに、この閉鎖空間は静かに張り詰めている。

「どうして?」

静かに立ち上がった高峰くんが、私の後ろのガラスに両手をついて迫る。
広い背中が夕日を遮って、影に覆われた。


「――俺のこと、意識してるから?」


ドキン、と胸に何かが落ちて波紋を広げる。

「……そうじゃない、けど……!」

強まる鼓動の理由を、私は言葉にできない。

気付いたら近づいていた地上に、俊平と星野さんの姿を見た。

来た時よりほんの少し距離が近くて、笑い合う顔が穏やかだった。

「焦りすぎだよ、呼水さん。」

目を泳がせる私に、高峰くんは満足そうに笑みを深める。
近づいてきたと思ったら、あっさりと元に戻っていく。



だから、心がぐらぐら揺れる。

多分、私達は間違ってる……気がする。