ハニートラップ


夕日が落ち始めた頃。

デートも終わりが近づいている。


通りがかった観覧車の前で、ふと星野さんが足を止める。

ライトアップされたそれを見上げて、躊躇いがちに口をまごつかせている。


「え――……っと、」


俊平はそれに気づきながらも、何を言っていいかわからなくなっているようだ。


むず痒くて、もう見ていられない。

フォローしようとしたら、高峰くんに先を越された。



「乗れば?観覧車。」


冷静な直球に、2人の顔が赤くなる。
高峰くんはそれを冷ややかに見ながら、圧をかけるように私を連れて乗り口に向かった。


先に、俊平と星野さんを乗せたゴンドラが登っていく。



「――まだダメ。」

そのすぐ後に行こうとしたら、手を掴んで止められた。
あの2人を、私の視界に入れないために。


数組に先を譲ってやっと乗り込む。
ドアが閉まると音が消えて、ゴンドラが昇っていく低音だけが響いていた。


向かい側の、物憂げに窓の外を眺める高峰くんの横顔を盗み見る。
夕焼けにブロンドの髪が映えて、綺麗だ。


「……俊平達のこと、フォローしてくれたの?」

まつ毛が翳る鋭い視線が私に流れる。
ちょっとだけ熱を感じて、キュッと喉が鳴った。



「俺がそんな優しい奴に見える?」


――見えない。

心の中で即答した。