ハニートラップ


キラキラとした光が通路を照らし、子供たちの笑い声が響く遊園地。

夏休みが始まってすぐ、なぜこんなところにいるかと言うと……


『頼む!珠桜!
ダブルデートして!』


――俊平に頼まれたから、である。

微妙な距離を開けて歩く俊平と星野さんの、数メートル後ろを歩く。
キグルミを指さす星野さんを見る、俊平の横顔が浮かれてる。

幸せそうでよかった、
と思える余裕があってホッとした。



「初デートだね?珠桜ちゃん。」

私の真後ろから、高峰くんが顔を出す。
そして、意識を向けさせる様に私の手を取った。

「……。冗談。
ただの付き添いでしょ?」

ム、と眉を寄せて手を払う。

「俺を誘ったの、呼水さんの方なのに。」

そうやってすぐ弄ぶ。

大袈裟に目を丸くしてから笑う高峰くんは、楽しそうにしている風に見えた。



「あの、どれから乗ろっか?」

園内マップを広げて、星野さんが私達を見る。

高峰くんのことだけは見ないようにしてるのは、多分悪名高い“高峰久哉”を怖がってるからだ。


「じゃあ――……あれ!」

辺りを見渡した私と俊平の指差しの先が揃う。

「だよなぁ!珠桜!」

同時に顔を見合わせ先に笑い出した俊平に、私は気まずく咳払いした。
星野さんは可笑しそうに肩を揺らしている。



――それを、高峰くんはずっと見ている。
口元には薄ら笑い。目は冷たく光ってる。

賑やかな声が満たす幸せな空間の中で、そこだけ空気が重かった。