「――私は付き合うならやっぱり、高峰 久哉かなっ♡」
ほぅっと頬に手を当てたミナが、甘い声でそう言った。
「えぇ、あの人顔はいいけど怖くない?
この間も他校生と喧嘩したとか、女遊びすごいとか……」
対してマキは、警戒するように目を細める。
「ねぇっ、珠桜はどう思う!?」
正反対の表情をした2人が一斉にこっちを向く。
私は宙に視線を彷徨わせた。
「えっと――……?誰、それ?」
言った途端、「え!」と2人の表情が揃った。
「知らないの!?ほら、あの金髪の!」
「うーん?」
金髪…言われてみればいたような?
高校に入ってから、学校中髪色が派手な人ばかりになったから特に記憶に留まっていない。
「すれ違う度ミナが騒いでたのに。」
そうだったっけ?
ミナが“かっこいい”と騒ぐ人は複数いるから、忘れた。
苦笑いで誤魔化そうとする私に、2人は“ダメだこりゃ”と言う顔をする。
ちょうどよくチャイムが鳴って、その場はお開きになった。



