「……ちょっとお腹が痛いだけ。」
「……そっか。」
高峰くんは何も言わない。
絶対に顔を見られたくなくて、膝を抱えた腕に力を込めた。
風が止んで、また空気が滞留し出す。
不意に、ツンと髪を引っ張られた。
何も反応しないでいると、何度か引いては緩めてを繰り返す。
センチメンタルな感情が削がれて、腕の隙間から高峰くんを見る。
甘やかな前髪から覗く目が、気怠げで儚く見えた。
「キスしていい?呼水さん。」
私と同じように首を傾げて、高峰くんが目線を合わせる。
胸にドキンと緊張が走った。
「こんな時まで、それ?」
「こんな時だからこそ、だよ。」
儚く見えていた無表情が、妖しい悪魔の笑みに変わる。
それで、思わず顔を上げてしまった。
「ちゃんとお伺い立てたんだから、逃げるなら今だよ?」
“ほら”と煽る様に髪を掴む手が離れていく。
代わりに、妖艶な顔が近づいてきた。



