「――ん?どした?珠桜。」
何も知らない俊平が、きょとんとした顔でこっちを見る。
夕日が差す飾り気のない赤い猫っ毛。
骨格が変わっても細くて頼りない体。
毒気を抜かれて、口元まで来ていた“好き”がまたお腹の中に引っ込んだ。
「……ううん!なんでもない!」
明るく笑って首を振る。
それどころじゃない俊平は、一度首を傾げただけでまた空と睨めっこし始めた。
危ない、高峰くんの挑発に乗ってしまうところだった。
「――あ。そうだ、珠桜。」
宙を見上げたまま、俊平は目線だけを私に送る。
「何?」
ぽかんと開けた口が可笑しくて、笑いながら応える。
俊平の目が言うかどうか迷う様に彷徨って、長く息を吸い込む。
一瞬息を止めて、意を決した様に吐き出した。
「明日、星野さんに告白するのってさ。
――どう思う?」
赤らんだ俊平の顔に、胸が砕かれる音がする。
焦点が定まらなくなって、何にも考えられなくなった。
「あ――……うん。」
気の利いたことを言わなくちゃ。
何か、早く。早く――
震えそうな唇を意識的に吊り上げる。
たぶん、ちゃんと笑えてる。
「いいと思う。頑張って、俊平。」



