「そんなこと言わずにさぁ。頼むよ!
女心なら珠桜の方がわかるだろー?」
……こんな時だけ都合よく私を女にしないでほしい。
明日に迫る星野さんとの初デートで苦悩する幼馴染を、呆れた様に眺める。
痛い心はもう隠せる様になった。
『珠桜ちゃんが俊平の幼馴染できてた理由、教えてあげよっか。』
心を見透かす高峰くんの甘い瞳を思い出して、ふっと視界が翳る。
――言われなくたって、わかってたよ。そんなこと。
「放課後デートだし、ちょっとファミレス行くくらいでいいじゃん。」
「えー、でも会話なくなったら気まずいじゃん……」
他の子のことで右往左往する俊平を、揶揄う様に笑ってあげる。
好きじゃないフリ。ただの幼馴染のフリ。
でもそうやって、ずっと俊平の隣にいたいだけなんだよ。私は。
数十分居座っても行き先は決まらなくて、帰り道も俊平はうんうん唸り続けている。
星野さんと出会ってから俊平がすっかり恋する男子になってしまって、なんだか違う人みたいだ。
『今から押せば間に合うかもよ?』
悪魔の囁きが蘇る。
幼馴染のままでいい。
それに矛盾する気持ちが頭を擡げて、心臓が音を立てて凍った。
「ねぇ、俊平。」
後ろに縫いつく影が伸びていく。
緊張で、顔が強張った。



