ハニートラップ


――――
――……

バタバタと遠ざかる足音を聞きながら、久哉は珠桜の部屋を見上げている。

温い夜風に当たりながら、痺れる頬をそっと手で包む。

ぐちゃぐちゃに乱れた表情が、別の男に向いているのが苦しいほど憎いのに。


「早く終わらせてよ、くだらない恋なんて。」


胸の奥が甘くざわめく。

――その痛みすら愛おしい。
心を支配する毒に、久哉は小さく微笑んだ。