ハニートラップ


「――でも、俊平がちゃんと“男”でよかったね?
今から押せば間に合うかもよ?」

「……っ、そんなことできない…!」


守ってきたものが大き過ぎて、手放せない。


胸が締め付けられる。
目からは涙が溢れそうだった。


しん、と沈黙が落ちる。

私を見下ろして、高峰くんは悲しそうに笑った。


「……俺だったらさ、」


落ちる声が、震えている気がする。


「惚れた奴が余所見してんのに、黙って見てるなんてこと絶対しない。」


真っ直ぐで、熱くて、痛い目線が心を貫く。

私の後ろ髪を高峰くんが掻き上げて、抱え込む様にして強く唇を押しつけてきた。


「……、っふ、」


――今までで1番強引なのに、1番優しくて切ない。


頭の中が高峰くんでいっぱいで、悲しい気持ちが消えてしまいそう。

それが痛くてたまらなくて、思わず手を挙げてしまった。

バチンと乾いた音が響く。

赤く熱を持つ頬をそのままに、高峰くんは流し目でゆらりと微笑む。
面白がっているのか、フッと笑い声まで漏らした。

――遊ばれた。

心はもうズタズタで、逃げ場なんてどこにもない。

「大っ嫌い……!」


緩んだ腕から抜け出して、小さい捨て台詞を吐いて家に駆け込んだ。