ハニートラップ


***
珠桜と千歳がいなくなった部屋で、俊平と久哉は2人きりだった。

「なんか、久哉がウチにいるって変な感じだなー。」

言いながら、俊平はベッドにドサリと腰掛ける。
その背景には、女物のカーテンが透ける窓。

久哉の関心はここに来た時からずっとそれだった。


「あれって珠桜の部屋?」

真っ直ぐ指差す先を、俊平が振り返って見る。
そして、あっけらかんと頷いた。


「そうだけど?ベッタベタだよなぁ。
俺らの親が面白がって仕組んだの。」


「便利でいいけど」と俊平はけらけら笑う。



“そういう気持ち”は、この男にはきっと微塵もないんだろう。


部屋を移るくらいの感覚で行き来できてしまう、安易で残酷なガラス窓。


「……生まれた時から一緒にいれば、そりゃ家族にもなるよねぇ。」


皮肉ってせせら笑う久哉の目に光はない。
人の気配が動く向こう側を、ただじっと見つめていた。