ハニートラップ


「あの、急にごめんなさい。迷惑でしたよね。」

「全然!迷惑かけたのアイツだから!
っていうか、敬語!やめよ?同い年なんだし……」

一生懸命笑って、矢継ぎ早に捲し立てる。

星野さんの怯えた顔が、ふわりと柔らかな笑顔に変わる。


……可愛い。

女の私でもそう思うんだから、男なら、余計に。


(あー、もう何やってんだろ。私。)


ジクジクと胸は痛いのに、目の前の彼女を憎めない。


「……うん、ありがとう。」

屈託のない笑顔。
滲み出るいい子そうなオーラ。


どうせなら、もっと嫌な子であってよ。
そしたら遠慮なく嫉妬できたのに。


「俊平が無茶してごめんね。
星野さんの家まで送るとか、もっとやり方あったよね。」

あ、今、私嫌な奴だ。
作り笑顔の裏側で、キン、と心が張り詰める。

牽制、かけちゃった。


「ううん、すごく怖かったから、助かったし……!
その…すごく、嬉しかった。」



(あ。終わった。)



はにかんだ表情に、キュッと胃が絞られる。
胸が抉れて、喉の奥が焼け付いた。


「――そ、か。なら、よかった!」


ごくりと唾を飲み込んで、込み上げてくるものを必死で押し戻す。

カーテンの隙間から差す光が、グラスについた水滴をキラリと照らした。