ハニートラップ



“しゅんぺい”と子供が作った木のプレートが下がる部屋の前で立ち止まる。

昔、一緒に作ったやつ。
いつまでもつけてるのがズボラな俊平らしい。

何度も見ているけど、その度くすりと笑えてしまう。


「俊平、入るからね?」


声だけかけてノックもせず、返事も待たずにそのドアを開けた。

瞬間、夏の生ぬるい風が廊下に吹き込む。
一緒に運ばれてきたのは、甘い花の香り。



目の前には俊平と、

――知らない女の子。


ドクン、と心臓が脈を打って、そのままサーッと冷えていく。
見開いた目が瞬きを忘れて、胸が浅く上下する。

「お邪魔してまーす……」

呑気な声と共に後ろから高峰くんが顔を覗かせる。
状況に気づいて驚いていたけど、一呼吸おいて笑みが浮かんだ。

「久哉!?……なんで?」

バツが悪そうな顔をした俊平が、高峰くんに気づいて怪訝な顔をする。


「そーいうことって言ったでしょ。」

パンと音を立てて私の手を掬い取ると、ヒラヒラと掲げて見せる。

その冷たさに息を呑み、ハッとして高峰くんを見ると、鋭い視線と目が合った。