歩き慣れた帰り道を、慣れない人と歩いている。
足速にゴールを目指す私を繋ぎ止める様に、数歩後ろの高峰くんが左手の指先を緩く握っている。
ちょっと距離が開いて、解けそうになると手の力がキュッと強まる。
夏でも冷たい高峰くんの手の温度が、ジリジリと暑いアスファルトの上ではちょっぴり気持ちがいいと思った。
20分ほど歩いて、“呼水”と“片桐”の表札が並ぶ家の前に立つ。
塀もなく隙間も僅かな家同士の並びを、高峰くんは暗い目で見上げていた。
「……どーぞ。」
そう言って私が入っていった敷地は、“片桐”の方。
まるで自分の家かの様に玄関扉に手をかけた私を見て、高峰くんはギョッとした。
「えっ、いーの?インターホンは?」
「大丈夫。この時間おじさんもおばさんも仕事でいないから。」
玄関ドアを開け放ち、早く入ってと手招きする。
「……そう言う問題じゃないだろ……。」
呆れを通り越してドン引きしながら、高峰くんが遠慮がちに家の中に足を踏み入れた。
迷いなく廊下を抜けて、リビングに入る。
そこから階段を上がって、俊平の部屋を目指した。
気まずそうに足音を潜めながら、高峰くんも付いてくる。
ふと、リビングのラックの上に並んだ写真立てが目に入って、そこで足を止めた。
――写真の中で、寄り添って笑う小さな男女に目を伏せる。
「高峰くん?何してるの、早く来て。」
「……あー、うん。今行く。」
薄く微笑んで見せながら、ざらつく感情を押し殺した。



