ハニートラップ


隅々まで光が行き届かない薄暗い教室で、唯一明るい窓辺に並ぶ。

少し遠くに背を置いたら、

「違うでしょ?」

腕を引かれて手が触れ合うくらいの距離に直された。


外のそよ風の音すらも聞こえるほどの重過ぎる沈黙。


けれど警戒して横目に見続ける高峰くんの横顔は、笑みを浮かべてふわりと軽い。

弧を描く薄い唇を見ると、キスの感触を思い出して胸がドキンと凹んだ。


「――ねぇ。呼水さんて何で俊平が好きなの?」

不意に顔を覗き込まれてびくりとする。
まつ毛に覆われたタレ目がちの目が意外に子どもっぽく見えて、鼓動を掻き消す様に顔を逸らした。

「…………。」

「無視?いいの?バラしちゃうけど。」

「最低!」

「学習しないなぁ、呼水さん。」

高峰くんはくつくつと意地悪く笑う。
弱みを握られ、圧倒的不利な立場が悔しくて唇が震えた。

「てことでさ。言ってみてよ。
俊平を好きな理由。」

その言葉に、ズキンと胸に痛みが落ちる。

ずっと大切にしまっていたものを、よりにもよってこんな悪魔に晒さないといけないのか。
理不尽すぎて沈む心に目を伏せた。