次の日。
高峰くんは本当に私を呼び出した。
“昼休み。昨日の場所。”
ドラマで見た、都合のいい女に送りつけるみたいなメッセージ。
あの悪魔にとって、私はまさにその立ち位置なのだ。
今日は自ら空き教室のドアを開けて、中に入る。
相変わらず段ボールだらけの、雑多で埃っぽい匂い。
レースカーテンの隙間から覗く窓の光を、積み上がった段ボール達が遮っている。
「ちゃんと来たね。えらいじゃん。」
淀んだ空間で、窓際のブロンド髪と思考の読めない涼しい目が鈍く底光りしている。
「……脅されてなかったら来なかった。」
教室に一歩入ったら、もうそれ以上は近づかない。
“呼んだら来ること”
その約束は果たせてるはずだ。
「隣来てよ。呼水さん。」
「…………嫌です。」
「命令。」
「…………。」
「俊平にキスのことバラすよ?」
その名前を言われて、抵抗できるわけがない。
わかってて言ってるんだろうから腹が立つ。
貼り付けた悪魔の笑顔を思いっきり睨みながら、重い足をできるだけゆっくり動かした。



