ハニートラップ


笑顔のまま表情が固まる。

俊平の目の前で高峰くんに抱きしめられた光景が、残酷にフラッシュバックした。

「いつからだよ?俺に隠し事なんて水臭いって。」

明るく笑い飛ばす声が遠い。
気軽に私の背中を叩く衝撃が、愛しいのに痛かった。

「付き合って、ない……よ。」

否定する声は、空気を震わすにはあまりに小さい。

「てかさ、何気に初彼氏じゃね?
あっ、て言うかもはや初恋――」

「付き合ってないってば!」

今度は大声で脳が痺れた。
しん、と部屋が静まり返って、俊平は驚いてぽかんとしている。

「お、おう…?何でそんな怒ってんだよ。」

俊平の困惑した声でハッとする。
自分の目にも口にも険しく力が籠っていることに気づいて、急いで少し力を抜いた。

「……俊平が勝手な勘違いするからでしょ!」

拗ねたように視線を逸らす。

あんなの見たら勘違いするのも当たり前なのに。理不尽な八つ当たりだ。

「悪かったって。もう何も言わねーから。」

私が怒るとあっさり引く。いつもそう。


でも、この件だけはもう少し引っかかってほしかった。


「わかればいいよ。」

――言えないけど。


“じゃあアレなんだったんだろ?”

って思考が見えるようなわかりやすい顔をしているのに、俊平はもう本当に何にも聞いてこない。

触れそうで触れない肩と手の距離が、今日はずっと遠くに感じた。