夜。
1日の疲れがどっと出て、ベッドの上で大の字になってぼーっと天井を眺めていた。
1日が100日くらいに感じる長さだった。
頭を走る記憶の断片のどれもに、あの悪魔のような笑顔とブロンド髪が焼き付いている。
瞼を閉じれば、あの生々しいキスの感触が嫌でも蘇ってきてしまう。
(いつか好きな人と、……って思ってたのに。)
洗面所でもお風呂でも何度も洗った唇を、更に握り拳で拭う。
どんなに洗っても擦っても、キスされた事実が消えてなくなることはない。
玩具で遊ぶみたいな感覚で私の大切なものを踏み躙って、綺麗に笑うあの顔が頭から離れてくれなくて。
喉の奥がグッと熱くなって、視界まで滲んできてしまった。
「……っく、」
目からこぼれ落ちそうなものを、歯を食いしばって堪える。
ごろんと横這いに態勢を変えて、布団の中に蹲った。
――コン、コン。
閉めたカーテンの向こうから、窓ガラスを叩く音がする。
ドン底の思考も涙も飛んでいって、跳ねるようにベッドから抜け出した。
カーテンを勢いよく開けて、静かに窓を開ける。
ふわり、春の夜風が湿っぽくなった目を乾かした。



