放課後を告げるチャイムと同時に、私は2組の教室に駆け込む。
「――俊平!帰るよ!」
何人もの友達に囲まれて、机に腰掛け談笑している俊平の横顔に迫った。
突然割り込んできた異分子に、友達たちは驚いて私を見ている。
バン!と机に手を付き必死の形相の私の顔を見下ろして、俊平もぱちぱちと瞬きを繰り返した。
「珠桜?何焦ってんだよ。
ってか、俺、今友達と喋ってて――」
「そんなのいいから!」
思わず出た大声に、俊平の背筋がピンと伸びる。
周りの視線も集まって、ハッと我に返って小さくなった。
「……いいから、今日だけは早く帰ろう。
そうじゃないと、アイツが――……!」
「――“アイツ”って、誰のこと?」
頭上から降ってきた中低音に、背筋がキーンと冷えて張り詰める。
(――高峰久哉……!)
ドッと心臓が鼓動を強める。
瞬間、後ろからゆるりと首元に筋張った腕が回った。
「ねぇ、誰が来ると困るの?珠桜ちゃん。」
顔近くに寄せられた唇が、何か言う度に耳殻を掠める。
逆らえない――そう思わされる恐怖を思い出してしまった。
ぞわぞわと神経は逆立つのに、体はガチガチに硬直する。
俊平もその友達も、教室にいた誰もが面食らって黙っている。
そのくせ高峰久哉が撒き散らす妖艶なオーラに、男女問わず頬を赤らめていた。


