「ハッキリさせたいとか、思わないの?」
「……思わない。」
「……どうして?」
「そしたら終わるの、わかるから。」
千歳ちゃんが淡々と、でも優しく問いかけてくるから、自分でも驚く程素直に言葉が出てくる。
……いや、ずっと誰かに相談したかっただけなのかも。
ちょっと胸は痛いけど、喉の奥につっかえていたものを吐き出せたような気持ち。
小さく口元を緩ませる私の横顔に、千歳ちゃんは選択を迷うように眉を寄せる。
(正直、あの人には関わらない方がいいと思う。
でも珠桜ちゃんはそれを選ばないから――
せめて、拗れないように。)
そう心の中で呟いて、真っ直ぐ私を見た。
「――気持ち、伝えてみたらどうかな?」
心臓を貫かれたみたい。
“終わらせろってこと?”卑屈が真っ先に過ぎる。
けれど千歳ちゃんの顔は心配そうで、そんな意味には見えない。
「どうしてそう思うの?」
だから、聞いた。
千歳ちゃんはまた悩む様に言葉を詰まらせ、それから慎重に話し出す。
「この間、高峰くんと偶然鉢合わせて……
その時に相談、されたから。珠桜ちゃんのこと。」
ドクンドクンと胸の音が大きくなっていく。
これは、期待の音だ。
「全部は言えない、けど。
とにかく、言葉にした方がいい気がする。」
視界はクリアになったのに、周りの音は遠くなる。
今すぐ飛び出したくなって、浮かせた腰をすぐに降ろす。
焦りすぎだと自制した。
――そうしてる間に、チャイムが鳴る。
抑えてた気持ちがやっと解放された気がして、笑いそうになる唇を噛んだ。



