「………は、」 ぴたり。 心の戸棚に隠してあったはずの感情。 それを、小娘が何の躊躇いもなく取り出した。 俺の奥底を見抜くような瞳の中に、世界の深淵が映っている。 怖い。 何だか分からないままだが、怖い。 戸惑うだけの俺を気にもとめず、小娘は怪しく黒に光るスピンドルを握った。 「お名前を伺ってもよろしいですか?」 「……田中だ。田中和夫」 小娘が空中を掴んで、左手でスピンドルを回す。 普通なら、繊維を糸として縒(よ)るための道具だが、なぜか繊維は見当たらない。