夢宮 ーある少女の悪夢晴祓録ー



 …悪夢?


 小娘は何を言っているんだ?



 ここしばらく、夢すら見ていないが…。

 やっぱり、ここまで訪ねてきたのは間違いだったのかもしれない。


 帰ろう。



 そう決意して足に力を込めた時、部屋に小娘の声が響く。

 
「夢宮として、あなたの心の傷、つまり“悪夢”を晴らいます」
「……はぁ」


 華奢な声。人の善意だけに触れて、たっぷりと愛情をかけられて生きてきたような。


 きっとこの小娘は、働き者の母さんほどの苦労を知らない。

 …なのに深い。



 抜けたような反応だったはずの俺の返事は、かすかに震えていた。
 

「私が持つ力の全て、惜しむことなく使うことをお約束します」