夢宮 ーある少女の悪夢晴祓録ー

 
 そして、はらりと涙を溢す。


 少女の組んでいた糸の上に涙が落ちて、そこだけが色を変える。



 黒が灰に。

 灰が黒い白に。



 なぜか、その光景をひどく美しいと思った。


「あ、ああ…」
「すみません…」
 

 この少女が、俺の代わりに泣いてくれたような気さえした。


 母さんの前では強がって、涙を見せようとしない俺の。



 少女は指先で涙を拭って、息を整えると、再び組台に向き合う。



 話していた時間は長くなかったはずなのに、組台から出る組紐は、とても長く、長い物だった。




 俺が母さんと出会ってからの時間くらい、永く途切れない物だった。