夢宮 ーある少女の悪夢晴祓録ー


 そこに思い当たってしまった時、自分でも驚くほどの複雑な感情が俺を襲った。


 許せない。憎い。愛おしい。恨めしい。


 母さんを信用できない。




 まだそうと決まった訳でもなかったのに、何もかもが信じられなくなった。



 酔った勢いでとんでもないことをしでかしそうで、毎日飲んでいた酒もやめた。

 それでも母さんのために料理は作り続けた。



 俺の代わりに、また別の男が感謝された。

 何もかも失った。



 なあ嬢ちゃん、俺はどうすればいいんだ。


 誰か助けてくれ。誰か。



 見知らぬ他人に、泣き喚きながら縋りつきそうな心を、必死に殺す。


「…悪かったな、こんな話聞かせて」
 

 まだ10代の、何も知らないような小娘に、暗い上にくだらない話を押し付けてしまった。


 この頼るほどの力もない小娘を頼ることしか出来ない自分が、情けなかった。




 自分を嘲笑うように吐き捨てる。


 と、今まで表情ひとつ変えなかった小娘が、悲しげに顔を歪めた。
 
 
「お辛かったですね…」