「ライバル会社にも情報を売ったのかと、先方がお怒りだ」
「私、そんなことしていません!」
「だが、これを作ったのはおまえだろう。しばらく会社に来なくていい」
 上司の冷たい言葉に綾香は目を見開く。

「私も調査を」
「おまえはいい」
 おとなしくしていろと言われた綾香は、仕事用のタブレットもすべて没収され、会社を追い出された。

 急いで悠斗にメッセージを送ったが既読にならない。
 電話もしたが、出てくれることはなかった。

 どうしてあんなに似た企画がライバル会社に?
 偶然にしては似すぎている。
 どうして流失したのか知りたいのに、今の自分には調べる術がない。
 
 金曜日の夜8時。
 いつものスーパーに綾香は一人で立っていた。
 一縷の望みをかけて悠斗が来てくれることを願っていたが、悠斗の姿はない。

「……そう、だよね」
 綾香は泣きながらその場に崩れ落ち、もう二度と悠斗には会えないのだと絶望した。